レクサスのトップパフォーマーは大人のスポーツカー
Text:石川 芳雄 Photo:原田 淳
いよいよレクサスにスポーツモデルが登場する。10月4日に発表され、12月25日から市販が始まるIS Fがそれだ。
メルセデスベンツのAMGや、BMWのMなど、世の高級ブランドにはトップパフォーマンスを誇るモデルが必ず存在するが、レクサスの場合はそれが「F」となる。
ちなみにこのネーミングは、ホームサーキットとでも言うべき東富士研究所と富士スピードウェイに由来するそうだ。
IS Fの中身をひと言で表すなら、レクサスの中でも最もスポーティーな色合いの強いコンパクトなISのボディに、オーバサイズの5・V8ユニットを積んだということになるが、もちろん話しはそんなに単純なものではない。乗る人に必要以上の緊張感を強いない走りの楽しさを目標とするレクサスは、このクルマに数々の新技術を投入して来ている。
まずエンジン。ベースとなったのはLS600h用の2UR-FSEだが、カムシャフトハウジングをヘッドと一体構造にして剛性を高め、バルブ駆動をラッシュアジャスターを持たない直動式とし、チタンバルブを採用するなど高回転化に対応させ、型式名も2UR-GSEとなった。ちなみに最高出力の423psは6600rpmで発生する。
ミッションもLS460用の8速ATをベースとしているが、マニュアルモードでは2速以上のすべてのギアでロックアップ制御をおこない、マニュアルトランスミッションに近いダイレクトなシフト感覚を実現している。これはクラッチツークラッチ制御という高度なメカニズムを採用したこの8速ATだからこそできたこと。エンジンの統合制御でショックを抑え、素早いシフトを実現したほか、パドル操作や回転を合わせるブリッピング機能も盛り込まれている。
車両の安定性制御を司るVDIMには、介入のタイミングを遅らせて運転の自由度を高めるスポーツモ-ドを追加。さらには、ボタンの長押しで姿勢制御とトラクションコントロールをカットするオフ機能も搭載されている。
ブレーキはフロントが360mmのドリルドローターに異径対向6ポッドキャリパー。サスも型式はISと同じだが、ジオメトリーから見直した専用チューンだ。
スタイリングはV8エンジンを収めるために盛り上がったボンネット、ワイドなフェンダー、2段重ねのデュアルエキゾーストなどでFを主張。インテリアも基本デザインはISそのものだが、アルミから削り出したメーターリングやサポートの良い前後のスポーツシートなどを装備してスペシャルな雰囲気を盛り上げている。
発売に先駆けておこなわれた今回の試乗は、富士スピードウェイの本コースが舞台。ただし生憎の雨降りで路面は本格的なウエットコンディションであった。
ピットロードを滑り出したIS Fはグイグイと速度を乗せる。軽いISのボディに423psだから当然だが、4000回転手前からスゴミのある吸気音が入り、回せば回すほどパワーが 漲ってくる感じが刺激的。こうしたスポーティーな感覚はLSに搭載されているV8とは明らかに異質。アクセルレスポンスも格段に鋭く、IS Fの走りがエンジンから作り込まれているのがわかる。





ミッションのフィールも素晴らしい。マニュアルでは自動シフトは行わずパドルでアップシフトを行う必要があるが、そのレスポンスが非常に素早い。若干のシフトショックはあるものの、それがかえって走りのダイレクト感を高めている。ダウンシフトでは軽やかなブリッピングが加わりさらにスポーティー。この 感覚は、最近数を増やしているツインクラッチ式のAMTと較べてもまったく遜色ない。
フットワークはスポーツモデルらしく、バシっと締まった感覚だが、だからといって乗り心地を極端に犠牲にしていないあたりはさすが。しかもこの足まわ り、サーキット走行でも423psを見事に制している。コーナーで腰砕けになるようなことは皆無で、アクセルを積極に踏んで行けばパワーオーバーステアの状態にも容易に持ち込める。ウェット路面でこうした走りを行うには相応の緊張もともなうが、VDIMがスポーツモードであれば一定量以上のドリフトアング ルにならず、安全にスポーツ走行を楽しむことが出来た。

400psオーバーの小型FRということで、乗る前はかなりのじゃじゃ馬を予想していたIS Fだが、実際にはコントロールの幅の広い、とても大人っぽいスポーツカーに仕上がっていた。この仕上がりなら766万円のプライスも大いに納得。と同時 に、続くレクサスFシリーズの行方も楽しみになって来た。

