カッチャオ検証ファイル  
image画像 Cさんは今年大学の3年生。アパートで一人暮らしをしながら学生生活を送っている。ちょうど去年の今頃、Cさんは念願だった愛車を手に入れた。免許は入学してすぐに取得しており、その後は車を買うためにアルバイトを続けていたのである。
 Cさんが購入したのは、中古のスポーティカー。型は古いが高校時代からの憧れのモデルだった。それから一年、この車はファミリーレストランでのアルバイトやドライブはもちろん、ちょっとした外出にまで、Cさんの“足”となっていた。アルバイトで資金を貯めて、少しずつドレスアップしていきたい−−。Cさんはそんな計画を温めており、次はホイールを交換する予定だった。
 その日、Cさんはアパートの駐車場で愛車の前に立ち、頭を抱えこんでいた。Cさんの視線は助手席側のドアの凹みに向けられていた。
 昨日の夜、深夜にアルバイトを終えたCさんは帰り道、途中にある公園の入り口に置かれた自動販売機でコーラを買った。そこから車を方向転換させたのだが、その際に嫌な音と軽い衝撃を感じた。車の側面を車止めのポールに接触させてしまったのである。
 あいにく、その日は台風が接近していて、強い風と雨で視界が通常よりも悪かった。そのため、ポールの存在に気が付かなかったことが原因だった。Cさんはすぐにでも状況を確認したかったのだが、横殴りの強い雨風ということもあり、帰宅後はすぐにアパートの部屋に駆け込んでしまったのである。
image画像  次の日、いつもより早く目を覚ましたCさんはすぐに外に出た。外は台風一過の青空が広がっていた。しかし、車の損傷部分を発見したCさんの気持ちは暗かった。予想以上に凹みがひどかったのである。

 その日の夜、アルバイトの帰り際にCさんはそのことを同僚に話した。そして、凹み傷を見てもらった。
 「あーあ、こりゃ、5万コースかな、下手するともっとかかるかも」
 「やっぱり……どうするかな、金ないしな……」
 「走りに影響ないんだろ、そのままにしとけば?どうせ中古車なんだし」
 「そりゃそうだけど……」
 そんな会話が続いた。確かに同僚の言う通りなのだが、Cさんとしては大事な愛車に自らの不注意で傷がついたことが許せなかったのである。一刻も早く修理したかったのだが、Cさんにはそんな金銭的余裕がなかった。
 「そうだ、お前、保険は入っているよな、証券持ってるか?」
 「うん」
 Cさんは車のダッシュボードから保険証券を取り出し、同僚に渡した。
 「OK、ちゃんと車両保険に入ってるな。免責ゼロの契約になってるから、車両保険で修理費用は全部出るぞ」
 「ホント?高い金払っててよかったよ」
 Cさんは車を買った店に紹介された保険代理店に薦められるまま、自動車保険に加入していた。しかし、自動車保険に関する知識は乏しく、自分の契約内容も正確には把握していなかった。
 「でもな、保険使うと次から保険料上がるぞ。自腹切った方が安上がりかもな」
 「ホント?それもキツイな……」
 明るくなったCさんの表情が再び曇った。
 「わかった、わかった。昨日の台風で飛ばされた物がぶつかったってことにしとけよ。台風が原因だったら等級もそのままだし、保険料も変わらないから」
 「ホント?そりゃ助かる。で、俺はどうすりゃいいの」
 「保険会社に連絡すりゃいいんだよ、台風が原因で車が凹んだって。看板かゴミ箱でも飛んできたってことにしとけよ」
 
 次の日、Cさんは朝一番で保険会社に電話した。
 「もしもし、今度の台風で車が凹んだんですけど……」
カッチャオの見解
 まず、状況を整理しておこう。Cさんは不幸にも愛車をポールに接触させ、傷つけてしまった。つまり、自損・物損事故を起こしてしまったのである。通常であれば、その修理費用は車両保険(任意、Cさんは加入)で賄うことができる。
 だが、Cさんはそうしなかった。それどころか、同僚の入れ知恵で車の損害は台風が原因として保険会社に申告しようとしているのである。
image画像  というのも、自動車保険を使うと、次回の契約時に3等級下がり、保険料もアップしてしまう。つまり、車両保険を使えば今回の修理費用を負担しなくてもいい(支払金額はゼロ)が、保険料が高くなってしまうため、結果的には自己負担となってしまうのである。
   それは保険の基本原則とも言えるのだが、例外として車両保険には等級据え置き事故が定められており、それに該当すれば現在の等級が次回も維持される(等級も保険料も変わらない)。
 等級据え置き事故には、飛び石によるガラスの破損や盗難、台風、竜巻、洪水、高潮、火災、落書きによる損害が規定されており、Cさんの同僚はそのことを知っていたのである。
 しかし、Cさんの行為は明らかに虚偽申告であり、このまま事が進めば保険金詐欺になる。すなわち、犯罪行為であり、刑事罰の対象になるのである。
 当然のことながら、保険会社は契約者からの申請を受けると、調査担当者が事故の状況を詳しく調べる。Cさんの場合であれば、車の破損部分を入念にチェックすることになるだろう。そして、プロの目はCさんの“ウソ”は簡単に見破るはずだ。それはすなわち、Cさんにとって最悪の結果を招くことを意味する。
 
◇     ◇     ◇
 今回のケースは、等級据え置き事故を悪用しようとしたもので ある。しかし、だからといって等級据え置き事故に関する知識を持つことは決して悪いことではない。むしろ、運転者にとって大きなメリットになるはずだ。
 実際、等級据え置き事故の存在を知らずに自腹で車を修理する(等級ダウン=保険料アップを避けるために車両保険を使わなかった)ケースも少なくないという。この場合、修理後に適用を申請しても認められる可能性は少ないのである。
 また、免責(=自己負担)金額の設定や特約の内容もしっかり理解しておいてほしい。現在では、1回目の保険使用がゼロ、2回目以降が有料という設定が一般的だが、保険会社によっていろいろなパターンがあり、それによって万一の際の判断も変わってくるだろう。
 自動車保険はいざという時(もちろん、そういう事態が発生しない方がいいのだが)、当事者や関係者を守ってくれる存在となる。だからこそ、自動車保険を有効に使えるよう、十分に自分の契約内容を把握しておくことが大切なのである。
 
※このケーススタディは編集部が作成したフィクションであり、実在の人物や団体等とは一切関係ありません。
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